京浜急行電鉄は、運賃改定の申請が国から認可されたことを受け、新たな割引制度の導入、既存の割引制度の見直しを含む2023年10月1日(日)からの実施運賃を届け出ました。
品川〜三崎口を家族4人で往復するといくら?
2023年4月21日(金)付で国土交通大臣から認可された新運賃の改定率は平均10.8%で、初乗り運賃は136円(IC乗車券・大人)から150円へと値上げされます。新型コロナウイルス感染症の影響による利用の低迷に加え、沿線の生産年齢人口が減少に転じたことを受け京急の経営環境は悪化しており、消費税率改定によるものを除いて28年ぶりの運賃改定となります。
一方で、普通運賃・通勤定期運賃とも距離が遠くなるほど改定率が低く抑えられ、41km以上の区間では値下げの設定となります。三浦半島など沿線の移動需要の拡大を図る施策で、例えば、品川駅〜三崎口駅間の改定後の普通運賃(IC・大人)は740円で、現行の943円から203円安くなります。通学定期運賃は、家計の負担軽減のため現行から据え置きとなります。
国が認可した上限運賃を超えない範囲で、利用者から実際に収受する運賃を定めたのが今回の届出です。その中で京急は、沿線活性化の実現に向け「小児均一運賃」「精神障害者割引」という2つの割引制度を新たに導入します。
「PASMO」などICカード乗車券を利用したときの小児普通運賃は改定後、大人初乗り運賃の半額に相当する75円の全区間均一運賃となります。子育てしやすいまちづくりが沿線の持続的発展につながるという考えのもと、運賃改定に伴う子育て世代の負担を軽減することにより鉄道でのお出かけを促進します。
例として、大人・小児各2人の計4人が品川駅〜三崎口駅間をIC乗車券で往復利用した場合、現行運賃では合わせて5,656円かかりますが、改定後は3,260円で、42%もの値下げとなります。大人運賃は遠距離区間の値下げ、小児運賃は均一化の恩恵を受けられ、4人合計で2,396円も節約できる計算です。
小児運賃の均一化は小田急電鉄が2022年3月に日本で初めて導入したもので、関西では泉北高速鉄道が2023年10月から実施する予定です。
なお、きっぷで乗車した場合の小児運賃はこれまで通り、大人運賃の半額となります。また、羽田空港第1・第2ターミナル駅、羽田空港第3ターミナル駅を利用する場合の小児IC運賃は一部区間を除き、加算運賃25円を別途加算した100円となります。
精神障害者割引は、「精神障害者保健福祉手帳(1級)」をお持ちの方が介護者と一緒に乗車する場合、それぞれ5割引で利用できるものです。共生社会の実現に向けた取り組みで、従来の身体障害者・知的障害者から対象を拡大することにより、障害がある方の公共交通利用をより円滑化し、社会参加を促します(京急が10月1日から設定する小児運賃均一化の例、特定運賃適用区間の新旧運賃比較など詳細は下の図表を参照)。
品川〜横浜など「特定運賃」は値上げ控えめ
京急では品川駅〜横浜駅間の一部区間に対し、割安な「特定運賃」を設定しています。運賃改定による利用者の負担増を抑えるため、上限運賃からの割引率が拡大され、現行運賃からの値上げ幅が低減されます。
例えば、現行の品川駅〜横浜駅間のIC普通運賃は、上限運賃が314円のところ、特定運賃が適用され11円安い303円となっています。改定後は上限運賃347円に対する割引額が34円に拡大され、特定運賃は313円になります。同区間で並行するJR東日本のIC運賃は303円(鉄道駅バリアフリー料金を含む)で、競合との価格差をできるかぎり縮めたい京急の意図がうかがえます。
一方、羽田空港両駅と都営地下鉄線・京成線各駅の相互間を対象に、負担軽減により利用を促進するために適用されてきた「空港連絡特殊割引」が廃止されます。コロナ禍による行動変容に加え、2019年10月に京急の空港線加算運賃が170円から50円に引き下げられるなど、設定当初から経営環境が大きく変わっているとの説明です。
京急は2022年3月に空港連絡特殊割引の割引額を縮小する見直しを行いましたが、今回の運賃改定を機に「一定の役割を終えた」と判断し、2023年10月1日(日)の運賃改定をもって廃止します。なお、東京都交通局と京成電鉄も、京急線・都営地下鉄線各駅と空港第2ビル駅・成田空港駅の相互間に設定している空港線特殊割引を同時に廃止することを発表しています。